ポップでキラキラした装画に『丸の内魔法少女ミラクリーナ』とインパクトのあるタイトルを見つけて、これぜっったい好きなやつ!!と即購入。
“丸の内”で“魔法少女”で“ミラクリーナ”ってどういうこと!?
これまでも村田沙耶香さんの小説はタイトルに惹かれて手に取ることが多かったのですが、特に興味をそそられる出会いにわくわく!
単行本に4話収録の中の短編小説。社会に対して問題提起した作品も多い印象の著者ですが、表題作の『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は共感できる部分が多くあり、テンポよくストーリーが進んで最後まで楽しく読めました。
ちょこっとあらすじ紹介
魔法少女ミラクリーナに変身して27年目。36歳のOL茅ヶ崎リナは、ストレスフルな日常を魔法少女に変身するという妄想で乗り切っている。
親友レイコとは小学校3年生の時一緒に魔法少女に変身した仲で、魔法少女「ごっこ」の話ができる言わば共犯者。
ある日モラハラ彼氏で悩むレイコを救おうと、モラハラ彼氏にも魔法少女になることを条件に出し、二人で駅や近所のパトロールを始める。以外にも彼は魔法少女活動にのめり込んでいくが……
社会性を身に着けた魔法少女
わたしが面白いと思ったのは、大人になっても魔法少女に変身するという事を「ごっこ」や「設定」として主役であるリナ自身が捉えているという事です。
いや、36歳になって子供の頃のように純粋に魔法少女になれると信じ続けるのは無理があると思いますが…現実には“なれない”と分かってしまっても、それでもリナは妄想の中で変身し続けるんです。
なぜならリナにとってそれは日常のストレスから自分を守るためでもあるし、自分を機嫌よくしてあげられる最適な方法だからです。
ストレスフルな日々をキュートな妄想で脚色して何が悪いんだ、と私は思う。
(「丸の内魔法少女ミラクリーナ」から引用)
残業終わりに面倒な仕事を頼まれた時、コンパクトで変身して“世界の平和を守るため”という設定にすることで仕事のモチベーションを上げ、“悪者がかけた催眠術を解くための呪文を入力している”という設定のもと猛烈な勢いでパソコンにタイピングしていく。
自分が喜ぶ方法を知ってるって最強じゃないか!!!
自分の脳内をいいほうにバグらせて信じ込ませたら、ストレスにも勝てる気がしてきました。
妄想で自分を幸せに出来てご機嫌に仕事ができたら周りにもいい影響がありそうだし、わたしも妄想スキルを身につけたい(笑)実は現代人に必要スキルなのでは!?とさえ思います。
もしかすると、わたしにも魔法少女(設定)になれる素質があるのかも!?
幸せ探しに疲れた時におすすめ、、、
毎日感じるストレスを軽減するためにいろいろな方法や考えが紹介されていて、なるほどそうかと思う一方で、そういうちょっと自己啓発に近いものに触れすぎると逆に疲れてしまう事があります。
「自分で自分の機嫌を取る」というのは大切にしてるけど、うまくいかないときもあるんです(笑)
自分が喜ぶことや幸せに感じる事を見失って、探すことすら難しい時もあります。
それでもやっぱり自分のために機嫌よくいたいし、幸せだなぁ…としみじみ感じたい。
この作品に登場するリナとレイコは小学校3年生の時初めて魔法少女に変身して、正義のために戦ってきらきらした日々を過ごしていました。
大人になってあの頃の二人には戻れないけど、魔法少女としての大事な部分はちゃんと持っています。
だからこそいつでもどこでも魔法少女に変身できるのです。
ただそんな二人でも魔法少女に変身できず、世界を守れず、誰も救えず、ミラクリーナが負ける現実を突きつけられることもあります。
個人的にはただただ明るく元気な魔法少女よりちょっとだけ闇落ちしてるぐらいのほうが魅力的で好きです(笑)
変身したときにだけ見れるきらきらした日常だけを生きてたら疲れてしまいますもんね…
わたしが魔法少女になるのは調子のいい時だけ。そんな時は思いっきり自分のご機嫌取って幸せホルモンどばどば出していくぞー!!!
幸せになるための努力は良いことだけど、頑張りすぎないようにしようと気づかされる本でした。
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